粛清

 

三城俊一

 

 

 

「総理大臣閣下、お約束のものが完成いたしました」

 

 深夜の執務室で、首相と博士による極秘の会見が行われていた。

 

「このロボットがある人を認識すると、その人が将来何をするか、どうなるのかを予知してくれます。もちろん持ち主の言うことは何でも聞くようになっています」

 

 首相は満足そうにうなずいた。

 

「これだよ、私が首相として必要としているものは。最大限の言葉で感謝する。もちろん、報酬は約束どおり払う」

 

「しかし、未来予知が必要なのはわかるとして、なぜロボットと組み合わせる必要があったのです?私にはどうもわからないのですが……」

 

「これは国家機密レベルのことだ。これ以上は詮索しないでくれたまえ。当初約束したとおりだ。さあ、仕事も終わったし、しばらくゆっくり休養してくれ。ご自宅までお送りさせよう」

 

 

 

博士が部屋を出て行き、あとには首相とロボットだけが残された。彼はロボットと向き合った。

 

「さて、私が何故お前を必要としているか、説明しよう。私はわが国の治安の悪化に、非常に心を痛めている。殺人、放火、強盗、強姦……特に痛ましいのは、被害者のうける心の傷だ。加害者を罰したとしても、被害は取り返しがつかない。こうした事件は、一旦起きてしまえばどうしようもない。未然に防がねばならないのだよ。」

 

ロボットは黙っていた。彼が受け付けるのは持ち主の命令だけであり、難しい話を理解するだけの知能はなかった。

 

「そこで、お前に任務を与える。近いうちに重大な罪を引き起こす人間を探し出し、即刻射殺せよ。残虐だといわれるだろうが、これで被害者が救われるのだ。加害者が被害者を殺して死刑になることを考えれば、命をひとつ救ったことになるからな。国民が安心して平和に暮らせるために、必要なことなのだ。拳銃を与える。早速明日から、いや、今日からでも取りかかってくれ」

 

「カシコマリマシタ」

 

 

忠実なロボットが電子音声を発して立ち上がった。そして、拳銃を受け取ると、記念すべき最初の任務を遂行すべく、目の前の首相に銃口を向けた。